インプラントは医療費控除の対象?いくら戻る(還付金)の計算と確定申告のやり方

インプラントは、虫歯や歯周病等が原因で歯を喪失してしまった場合でも、天然の歯のような機能を取り戻せる治療です。
メリットが大きい一方で健康保険が適用されないため費用が高額となることから、治療を断念する人も少なくありません。
ここでぜひ知っておきたいのは、費用負担を軽減できる方法があるということです。歯科関係では、治療を目的とした治療費や歯列矯正は医療費控除の対象となり、インプラントもそのひとつです。
医療費控除は「難しそう」「税金のことはよくわからない」という人も、確定申告の条件や、やり方のポイントをつかめば、それほど難しくありません。
この記事では、インプラントの医療費控除の基礎知識や条件、申告のやり方などについて解説します。
この記事を読むことで、インプラントの医療費控除に関する基礎知識や確定申告の必要書類、申告方法などが理解でき、次のような疑問や悩みを解決します。
この記事でわかる事
- インプラントは医療費控除の対象か?
- インプラントの医療費控除の仕組みを具体的に知りたい
- 医療費控除を受けるとどれくらい戻るの?
- インプラントの医療費控除の提出方法とは
目次
インプラントは医療費控除の対象になる
インプラントは、失った歯の機能を再び取り戻せる治療です。まるで自分の歯が新たに生えてきたかのように違和感がなく、見た目も自然でなんでも噛めるというメリットがあります。
ただ、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科治療ですので、すべての人が受けられるというわけではありません。
また、インプラントは健康保険が適用されないため、自費診療となり費用も高額です。1本あたり30~50万円が相場といわれていて、治療のハードルを高める要因ともなっています。
そこで、お勧めしたいのがインプラント治療の医療費控除の申告です。インプラントにかかった費用は医療費控除の対象となるため、確定申告を行えば、支払った費用の一部が戻ってくる可能性があります。
インプラントの治療に付随するさまざまな費用が対象となりますので、漏れがないよう効果的に申告することが大切です。
インプラントの医療費控除の仕組み
インプラントの医療費控除の仕組みやポイントを以下で説明します。
医療費控除とは何か
そもそも医療費控除とは、その年に支払った一定額以上の医療費を確定申告すれば、支払った費用を基に算出される金額に対して所得控除が適用され、税金が還付される制度です。
具体的には、その年の1月1日~12月31日までの1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合、または総所得200万円未満であればそのうち5%を超えた場合、200万円を上限として確定申告すると、医療費控除があり所得税と住民税が減額されるというものです。
インプラントのように高額な治療を受けた場合は、医療費控除の申告を行えば、費用負担が軽減されることになります。
医療費控除の条件とポイント
医療費控除を受ける条件やポイントは下記の通りです。
- その年の1月1日から12月31日までの1年間に総額10万円以上医療費を支払った場合
- 複数年に渡った場合は、その年ごとに申告が必要
- 同一生計世帯なら家族の分も合算できる
- 同一生計世帯の中で最も所得が多い人が申告する
- 通院にかかった交通費も申告できる
- デンタルローンを使って分割で支払った場合は契約した年を対象とし、金利は含まれない
- 確定申告をしなければ、医療費控除は受けられない
- 申告期限は3月15日、猶予期間は5年(5年前までさかのぼって申告可能)
- 保険金で補填された場合は、差し引いた金額を申告する
- 高額療養費との併用はできない(高額療養費は保険適用分を保険者に申請)
- 公務員などの職種であっても、医療費控除は確定申告が必要
- 年末調整では申請できない
医療費控除の対象
医療費控除の対象となる費用や対象者について説明します。
医療費控除の対象となる費用
- 診察費:診断のための検査費用、治療後のメンテナンスの費用
- 治療費:手術、インプラント体・アバットメント・上部構造の費用
- 治療や療養に必要な医薬品の費用:処方薬や必要とされる医薬品の費用(鎮痛剤など)
- 通院にかかった交通費:公共交通機関の交通費(自家用車やタクシーは基本的に対象外)
医療費控除の対象となる人
- 治療を受けた本人
- 治療を受けた人の配偶者
- 治療を受けた人の親族(6親等以内の血族または3親等以内の姻族)
医療費控除還付金の計算方法
医療費控除を受けるといくら戻るのか、計算例を交えて解説します。
医療費控除の金額 = その年に支払った医療費の総額 - 保険金 - 10万円 or 所得の5%(少ない方)
還付金額 = 医療費控除の金額(上限200万円)× 所得税率
| 課税される所得金額(年収) | 税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超330万円以下 | 10% |
| 330万円超695万円以下 | 20% |
| 695万円超900万円以下 | 23% |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% |
| 1,800万円超4,000万円以下 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
例①インプラントの治療費:60万円
保険金:0円
年収:400万円
60万円-0円-10万円=50万円(医療費控除額)
50万円×20%=10万円(還付金)
例②インプラントの治療費:60万円
保険金:20万円
年収:720万円
60万円-20万円-10万円=30万円
30万円×23%=6.9万円(還付金)
例③インプラントの治療費:30万円
保険金:15万円
年収:320万円
30万円-15万円-10万円=5万円(医療費控除の対象外)
- 差し引いた額が10万円以下の場合は医療費控除対象外
インプラントの医療費控除確定申告のやり方
インプラントの医療費控除を受けるための確定申告の申請方法や必要書類について、下記に紹介します。
申告書類の準備
医療費控除の確定申告を行う場合には、次のような書類の準備が必要です。
- 医療費控除の明細書(国税庁HPからダウンロード可)
- 領収書やレシート
- 確定申告書(国税庁HP上の確定申告書等作成コーナーで作成できる)
- 保険会社から支払われた保険金の金額を確認できる書類
- 交通費がわかるもの(公共交通機関に限る)
- マイナンバーカード
- 還付金の振込口座の番号
- 印鑑
通常は健康保険組合の「医療費のお知らせ」で申請できますが、インプラントのような自費診療分は記載されていません。そこで、領収書の提出が必要となりますので、5年間は保存しておくことをおすすめします。また、交通費は記録に残しておくようにしましょう。
申告書の提出方法
医療費控除のための確定申告の提出方法には次の4つがあります。
- 税務署窓口に直接持参
- 税務署に郵送
- e-Tax(オンライン)
マイナンバーカードでマイナポータルと連携していれば、パソコンやスマートフォンなどを使って申告ができます。24時間申請可能で、既に一部のデータは入力されていて添付書類が省略できるものもありますのでとても簡単です。
申告の期限
医療費控除の申告は、5年前までさかのぼることができます。一般的な確定申告期間は、2月16日から3月15日(休日の場合は翌平日に振替え)とされています。ただし、還付申告(戻ってくるための申告)の場合は、翌年の1月1日から12月31日までに申告することができます。ただ、税務署は年末年始が休みとなりますので、余裕をもって提出することが大切です。
個人事業主などで所得税と一緒に申告する場合には、2月16日から3月15日の確定申告期間内に申告することが求められます。
【まとめ】インプラントは医療費控除の対象?いくら戻る(還付金)の計算と確定申告のやり方
インプラントは医療費控除の対象となるか、そして控除を受けるための条件や、やり方について解説しました。
この記事では、下記のようなことを理解していただけたのではないでしょうか。
この記事の要約
- インプラントは医療費控除の対象になり確定申告が必要
- インプラントに関して1年間に10万円以上の医療費を支払った場合、200万円を上限として医療費控除の申請ができる
- 医療費控除は、支払った総額から補填された保険金と、10万円または所得の5%を差し引いた額に、所得額に相当する課税割合をかけた金額が還付される
- 医療費控除の確定申告をするには、5年を期限として所定の提出書類を税務署の窓口か郵送で提出するか、マイナポータルやパソコンを使ってe-Taxによるオンライン申告をする方法がある
インプラントは、天然の健康な歯の機能を補填してくれる画期的な治療法です。しかし、高額な費用がかかることや外科手術のひとつであることなどの理由から、義歯やブリッジを選択する方もおります。
実は、インプラントが医療費控除を受けられることは意外に知られていません。また、医療費控除は確定申告をしなければいけないため、経験のない人にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。
確かに面倒ではありますが、医療費控除の申告はそれほど難しくはなく、国税庁のHPやマイナポータルなどを使って比較的簡単に準備や手続きができますし、税務署に直接行けば丁寧に教えてくれます。これまで経済的な理由でインプラントを諦めていた人も、還付があることで治療を受けやすくなります。
南多摩歯科クリニックでは、医療費控除の申告に必要な領収書の発行やデンタルローンの取り扱いもございます。インプラントをご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。



