乳歯は虫歯になりやすい?永久歯への影響についても解説

「乳歯はどうせ生え変わるから、虫歯になっても大丈夫」とお考えではありませんか?
実は、乳歯の虫歯は、その後に生えてくる永久歯の質や歯並び、さらにはお子さまの健やかな成長発育にまで大きな影響を及ぼす可能性があります。
乳歯は永久歯に比べてエナメル質が薄く、一度虫歯になると進行が非常に早いため、早期の発見と予防が欠かせません。
この記事では、乳歯が永久歯よりも虫歯になりやすい理由や、放置した場合の永久歯への悪影響、そして今日から実践できる効果的な予防法を詳しく解説します。
この記事を読むことで、乳歯特有の虫歯のリスクと、お子さまの将来の歯の健康を守るための具体的なケア方法を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
この記事でわかる事
- なぜ子供の歯(乳歯)は大人より虫歯になりやすいの?
- 乳歯の虫歯を放っておくと、次に生えてくる永久歯にどんな影響がある?
- 自宅で虫歯を見分けるポイントや効果的な虫歯予防のコツは?
- 歯科医院ではどのような予防処置をしてもらえるの?
目次
乳歯が虫歯になりやすい理由
乳歯が永久歯より虫歯になりやすい理由としては、歯の構造、歯質、生活習慣などの影響が挙げられます。
歯質の耐酸性
虫歯は口腔内の乳酸菌の産生する乳酸により、歯が脱灰されることで生じます。
乳酸に脱灰されやすいかどうかを耐酸性と言いますが、歯の耐酸性は萌出から2〜3年かけて獲得されるものなので、萌出から間もない時期は歯の耐酸性は高くないです。
耐酸性の低さも、乳歯が虫歯になりやすい理由のひとつです。
エナメル質の厚み
歯冠の構造は、大部分を占める象牙質とその外側部分であるエナメル質で成り立っています。
エナメル質は身体の中で最も硬い組織です。象牙質と比べると脱灰もされにくいのですが、乳歯のエナメル質の厚みは永久歯のそれと比べると半分くらいしかありません。
前述した通り、萌出して間もない乳歯は耐酸性も高くないです。このため、エナメル質が一度脱灰されると容易に象牙質にまで進みやすいです。
エナメル質の厚みという乳歯の構造上の問題も、乳歯が虫歯になりやすい理由に挙げられます。
プラークコントール
虫歯の原因となる乳酸菌など、細菌が集まったものをプラークとよんでいます。歯の表面に白いカスのようなものがあれば、それがプラークです。
プラークを取り除くことをプラークコントロールといいます。プラークコントロールの基本は、毎食後の歯磨きです。ところが、小さなお子さんは歯を上手に磨くことができません。歯間だけでなく、歯肉縁上にもプラークが残りがちです。
歯磨きが上手にできないことも、乳歯が虫歯になりやすいとされる理由です。
間食の頻度
お子さんは大人の方と比べると間食の頻度が多い傾向が見られます。
何かを食べると乳酸菌が乳酸を産生するので、口腔内のpHが下がります。下がったpHは唾液の緩衝作用で中性に戻るのですが、それには時間がかかり、中性に戻る途中で何かを食べるとまたpHが下がってしまいます。pHが低い状態が長く続くと、それだけ虫歯になりやすくなります。
間食の頻度の多さも、乳歯の虫歯の誘因になっています。
乳歯の虫歯の好発部位
乳歯の虫歯の好発部位は年齢によって差があり、乳児期では上顎前歯部、幼児期では臼歯部の咬合面などに生じやすい傾向が認められます。
上顎前歯
1〜2歳ごろは、上顎の前歯の口蓋側面に好発します。特に哺乳瓶を使うお子さんによく見られます。
乳臼歯の咬合面
2〜3歳ごろは、乳臼歯の咬合面の小窩裂溝部分に好発します。
乳臼歯の隣接面
4〜6歳ごろは、乳臼歯を中心に乳歯の隣接面に好発します。
乳歯の虫歯の見分け方
乳歯の虫歯もCO、C1〜4の5段階に分類されます。
それぞれの見分け方は、歯冠の色調や形態の変化などです。
色調の変化
乳歯の虫歯は、艶のない白濁→茶色→黒色と色調の変化を伴います。
白濁の段階は、COと分類されるごく初期の虫歯です。
茶色はC1かC2、黒色はC3以降である場合が多いです。
形態の変化
COの段階で起こっているのはエナメル質の結晶構造の粗雑化だけなので、歯冠の形態自体に変化はありません。
C1では歯冠のエナメル質、C2ではエナメル質直下の象牙質だけに実質欠損が生じます。
C3以降では、歯冠の構造の大部分が失われています。
デンタルフロスのほつれ
デンタルフロスは歯間部分の清掃に使います。
デンタルフロスを通したとき、デンタルフロスにほつれが見られたら、隣接面齲蝕という歯間部分の虫歯が発生している可能性が疑われます。
乳歯の虫歯の影響
乳歯の虫歯を適切に治療せず放置していると、後継永久歯の形成不全や歯列不正、構音機能の障害など、さまざまな影響が起こりえます。
後継永久歯への影響
乳歯の虫歯も永久歯と同じく虫歯が進行すると歯髄が壊死し、根尖病巣を形成します。
乳歯の直下にある後継永久歯に根尖病巣が達すると、後継永久歯のエナメル質形成不全を起こす可能性があります。後継永久歯の形成不全を生じると、後継永久歯に色調の変化や形状の不正、歯質の脆弱化などが生じます。
歯列への影響
後継永久歯の多くは乳歯より大きいため、乳歯列には後継永久歯が萌出できるよう発育空隙などの空隙があります。
ところが乳歯が虫歯により歯冠の大部分を欠損すると、隣接歯の傾斜や対合歯の挺出が起こるため、乳歯列の空隙が失われます。その結果、後継永久歯の萌出余地が不足し、頬側や舌側に転位して萌出するなど、永久歯列の歯列不正を生じることがあります。
言語発達への影響
乳歯も永久歯と同様に、発音に重要な役割を担っています。
例えば、前歯はサ行やタ行、ナ行の発音に大きく関係しています。仮に乳歯の前歯が虫歯により大きく欠損すると、正しい発音ができなくなります。
言語の発達は幼少期より始まっているため、乳歯の虫歯により正確に発音する練習ができなくなると、将来的な言語発達に悪影響を与える可能性があります。
咀嚼への影響
乳歯の虫歯により、咬合痛や乳臼歯の歯冠の欠損が生じると、反体側を中心に咬合する偏咀嚼を起こすことがあります。
偏咀嚼を続けると、食べ物を十分に咀嚼することができないので、咀嚼能力が低下します。
成長発育への影響
乳歯の虫歯により咀嚼機能が障害されると、消化吸収の低下が起こり、低栄養になるリスクが高まります。
成長発育期に十分な栄養を得ることができなければ、身長が伸びない、体重が増えないなど、成長発育に悪影響を及ぼす可能性が生じます。
外観への影響
乳前歯の虫歯を放置していると、口元の外観が損なわれます。
乳臼歯の虫歯の場合は、咬合平面の傾きの原因となり、オトガイ部が正中から偏位することがあります。
偏咀嚼を続けていると、顎顔面部の咀嚼筋の発達に左右不均衡が生じます。そして、顔貌の左右対称性も損なわれ、顔つきにも影響が出ます。
このように、乳歯の虫歯はお子さんの顔つきにも悪影響を与えます。
乳歯の虫歯の予防法
乳歯の虫歯も永久歯と同じく、プラークコントロールやフッ化物、食習慣の見直しなどにより予防できる病気です。
プラークコントロール
乳歯の虫歯予防の基本となるのがプラークコントロールです。
虫歯を予防するためには歯ブラシで歯の表面を磨くだけでなく、歯間ブラシを使って歯間部まで磨く必要があります。
お子さん自身による毎食後の歯磨きを習慣化するとともに、少なくとも小学校低学年の頃までは保護者の方による仕上げ磨きをおすすめします。
フッ化物応用
プラークコントロールと並行して行っていただきたいのが、フッ化物の利用です。
フッ化物を歯に作用させると、耐酸性の向上や虫歯の原因菌の活動抑制、脱灰された部分の再石灰化作用が得られ、虫歯を予防できます。
フッ化物の利用法は、毎食後の歯磨きのときのフッ化物を配合した歯磨剤、1日1回、もしくは1週間1回のペースによるフッ化物洗口、年数回の歯科医院でのフッ化物塗布があります。
最も簡単なのがフッ化物配合歯磨剤による歯磨きです。フッ化物配合歯磨剤は、フッ化物の濃度950ppmと1450ppmの2種類あります。
1450ppmの方が虫歯予防効果は高いのですが、6歳未満の使用は禁止されています。6歳未満のお子さんには、フッ化物濃度950ppmの歯磨剤をお使いください。そして、最も効果が高いのが歯科医院でのフッ化物塗布です。
どれか1つだけにするのではなく、3つを組み合わせるのが効果的です。
シーラント
シーラントは、主に臼歯部の咬合面の小窩裂溝に対する虫歯予防処置です。
咬合面の小窩裂溝はブラッシングが困難なので、虫歯の好発部位のひとつです。
小窩裂溝にコンポジットレジンやグラスアイオノマーセメントを填入し、ブラッシングが困難な部位をなくし、虫歯を予防します。
食育
前述した通り、お子さんの多くは間食の習慣があります。間食を含め、食習慣の見直しも大切です。
まず、虫歯の原因菌の活動源となる糖質や炭水化物の多い飲食物を制限しましょう。また、間食の回数も減らすことも大切です。
食習慣を見直すことも、虫歯予防の方法のひとつです。
定期的な歯科受診
歯科医院を定期的に受診し、歯科医師や歯科衛生士によるお子さんの口腔内の観察やクリーニング、フッ化物塗布を受けるようにしましょう。
定期的な歯科受診は、歯の異常をCOの段階で気付くきっかけになるので、虫歯に発展するのを防ぐことにつながります。
【まとめ】乳歯は虫歯になりやすい?永久歯への影響についても解説
乳歯が虫歯になりやすい原因と、それが永久歯や全身の成長に与える影響、そして正しい予防対策について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事の要約
- エナメル質の厚みが永久歯の半分ほどしかなく、萌出から間もない時期は酸への耐性も低いため、虫歯が進行しやすい
- 放置すると、後から生える永久歯のエナメル質形成不全や萌出スペースが不足することによる歯列不正を招く可能性がある
- 正しく噛めなくなることで、発音の障害や偏咀嚼による顔貌の左右不均衡、低栄養による成長発育への悪影響につながることもある
- 毎食後の丁寧なプラークコントロールに加え、年齢に応じた濃度のフッ化物利用や間食の習慣を見直すことが重要
- 歯科医院でシーラントなどの専門的な処置を受けたり、定期受診をすることで初期虫歯の段階で気付くことができる
乳歯の虫歯予防は、お子さまの将来の笑顔を守るための大切な基盤づくりです。
「まだ乳歯だから」と油断せず、日々のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスを組み合わせて、健康なお口の環境を整えてあげましょう。




