舌小帯短縮症とは?症状・リスク・治療法(手術の判断)についても解説

赤ちゃんの授乳がうまくいかなかったり、成長とともにお子さんの滑舌や話し方が気になったりしたことはありませんか。
もしかすると、それは「舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)」が原因かもしれません。舌の裏側にあるひだが短いために舌の動きが制限されてしまうこの状態は、見た目だけでなく、食事や発音、さらには将来の歯並びや心理面にも様々な影響を及ぼすことがあります。
我が子の症状を見て「このまま様子を見ていて大丈夫なのだろうか」「手術が必要なのだろうか」と不安に感じる親御さんも少なくありません。
この記事では、舌小帯短縮症の概要や症状、引き起こされるリスク、そして手術を含む治療法を詳しく解説します。
この記事を読むことで、お子さんやご自身の舌の状態や適切な治療・訓練のタイミングを理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
この記事でわかる事
- 舌小帯短縮症とは、具体的にどのような状態や原因で起こるの?
- 症状の違いや、家でできるセルフチェック方法は?
- 診断はどのような基準でされるの?
- 放置すると、どんなリスクがあるの?
- 手術をしない治療法と、手術が必要なケースの判断基準は?
- 従来のメスを使った手術とレーザー治療には、どのような違いやメリットがあるの?
- 手術をした場合の治療の流れや術後の注意点は?
目次
舌小帯短縮症とは
舌小帯短縮症は、舌の裏側にあるひだ状の組織が歯肉から舌の先端まで伸びている場合や、正常な状態より短い、あるいは厚い状態にあり、舌の可動域が制限されるものをいいます。
これは先天的な異常で、攣れ舌やタング・タイ(Tongue-tie)ともよばれ、日常生活に関わる様々な障害の要因となることがあります。
舌小帯短縮症の原因
胎児期に適切なサイズや位置に退縮するはずの舌小帯がそのままの状態で残ることが要因として考えられていますが、遺伝も関係しているといわれています。
ただ、明確な原因はわかっていません。
舌小帯短縮症にみられる症状とセルフチェック
舌小帯短縮症は、症状の程度によって「軽度」「中等度」「重度」に分けられます。
軽度:口を大きく開けた時に舌尖が口の大きさの半分より上まで上げられる状態
外観的には、舌小帯が薄く伸びた紐状に見えます。開口を最大にして、ほぼ問題なく上顎に舌尖をつけられるか、また左右の口角に舌尖をつけることができるかでチェックできます。
程度によっては、ラ行の発音がやや苦手なケースもあります。軽度では日常生活にほとんど支障はありません。
中等度:口を大きく開けたときに舌尖が口の大きさの半分くらいしか上げられない状態
外観的には、舌小帯はややしっかりとした膜やヒダ状に見えます。開口時に舌を持ち上げても上顎にくっつけることが難しく、口を閉じ気味にすると何とか触ることができますが、口角につけることは困難です。
舌を前に出したり、持ち上げたりすると舌尖が引き攣れてハート型に見えます。また、ソフトクリームを舐めるのが苦手な人も少なくありません。タ行やサ行、ラ行などの発音が苦手です。
重度:舌を前方に出したときに口唇より前に出せない状態
舌が持ち上がらないので、舌小帯がほとんど見えない人もいます。なんとか下口唇に舌尖をつけることはできますが、口唇を左右に舐めるのは難しく、発音しにくい音が多いため強い構音障害がみられることがあります。そのため小声でささやくように話す人もいます。
舌小帯短縮症の診断基準
舌小帯短縮症の診断は、小児科や歯科口腔外科などの担当する医師や歯科医師、医療機関によって異なる考え方があります。
一般的には、患者の年齢や舌小帯短縮症の程度とそれによる影響、手術のリスクなどを総合的に考慮して判断されます。現在、舌小帯短縮症の基準は明確に統一されていないため、国際的な指標であるHazelbakerスコアやクリニックで設定した独自のスコアによって診断しているところもあります。
また、発達に合わせて新生児や乳児と幼児では診断基準が異なります。多くの場合、舌小帯の位置(舌と口腔底)、舌尖の形状、舌の挙上や舌出しの程度、哺乳の状況や発音・摂食嚥下の状況などから診断されます。
日本と海外では診断基準が違う
日本では、舌小帯短縮症の治療について様々な見解があります。
以前は生後間もないころに手術をしていた時代もありましたが、2001年に日本小児科学会が、手術の有効性が確立されていないという見解を出したことから、手術を行わず「様子を見る」というのが日本のスタンダードとなっています。
一方、海外(アメリカやカナダ、イギリスなど)では、舌の形状がどうあるかではなく、授乳や発音といった舌の機能に問題があるかどうかを判断の根拠としています。
米国小児科学会や国際母乳医学会など複数の学会や機関において、舌小帯短縮症の手術についての判断基準が明記されており、日常生活に支障を及ぼす機能異常があれば積極的に手術を行うというスタンスが主流となっています。
舌小帯短縮症によるリスク
舌小帯短縮症は、哺乳や食事に関する問題や構音障害、口呼吸、歯列不正、将来的なコンプレックスなどのリスクがあります。
哺乳や食事の問題
乳児の場合、乳首への吸い付きが弱かったり浅かったりして、十分に母乳やミルクを飲むことができません。授乳時に「カッカッ」や「ちゅぱちゅぱ」と音がする場合、しっかり吸いつけず、空気を一緒に吸っている可能性が高いです。
幼児の場合、食事の際に咀嚼や口腔内での食塊形成(食べ物を飲み込みやすく舌や口蓋を使ってまとめる働き)がうまくできずに、食事に時間がかかったり、消化不良や栄養不足になったりすることもあります。その結果、体重がなかなか増えない子どももみられます。
構音障害
発音は、舌を絶妙に使うことで完成されます。舌小帯短縮症では舌の可動域が制限されるため、舌の裏側を口蓋に押しつけて、撥ねるように動かして発音する「ラ行」や口蓋を蹴るように使う「タ行」、口腔内で舌で小さな空間を作り空気を上手に操って発音する「サ行」などがうまく発音できず、滑舌が悪くなることがあります。
口呼吸
リラックスした状態では、舌尖が口蓋(上顎の前歯の裏側の歯肉)に軽く接触しているのが舌の正しい位置です。この時、口は閉じられ鼻呼吸をしています。しかし、舌が上がりにくい舌小帯短縮症の場合、舌が下顎前歯の裏側に下がったままの状態にあります。
近年増加しているお口ポカンの状態で、舌と上顎の間には空間ができて口呼吸になります。口呼吸は、口腔乾燥や感染症のリスクを高めることがわかっています。
歯列不正
歯列は舌と口唇の押し合う力によってバランスを維持しています。
舌小帯短縮症では、舌が下顎前歯の裏側に落ちているため、前歯を舌側から押す力が強くなる一方で、舌が下がることで口唇が開いたままで口呼吸をする状態が日常化するため、歯を外側から押す力が弱くなり、出っ歯や咬合のズレなどを引き起こすことがあります。
コンプレックス
舌小帯短縮症によって起こり得る構音障害や歯列不正などは、成長と共にコンプレックスとなることがあります。このようなコンプレックスは、将来的に人付き合いや仕事などにも影響して、心理的に大きな負担となることがあります。
舌小帯短縮症の治療法
舌小帯短縮症の治療には、手術をしないケースと手術が必要なケースがあり、程度や症状によって判断されます。
手術をしない治療
舌小帯短縮症の程度が軽度~中等度の場合、舌の可動域を広げる筋機能訓練(MFT)を行います。MFTは舌や口腔周囲の筋肉を鍛えて正しく使えるようになるためのトレーニングで、程度によってはこれだけでかなりの問題を改善できるケースもあります。
また構音障害の治療では、言語聴覚士による指導を受けながら発音の訓練を行うこともあります。いずれのトレーニングも、継続的に続けることが大切です。
ただし、状態によっては手術の必要性に迷い、判断が難しいケースもあります。そのような場合は、継続的に経過観察を行い、手術の必要性やタイミングについて適切に判断されることが重要です。
手術による治療
重度の舌小帯短縮症や、機能に明らかな悪影響がみられて機能訓練を行っても改善が望めない場合には、舌小帯切除術によって小帯を切断する手術を行います。
手術の必要性の判断と時期
舌小帯短縮症の程度やどの程度の機能障害があるのかなどによって、手術の必要性を判断します。
乳幼児で哺乳が十分にできず、全身の発達を障害している場合は早期に手術を行うこともあります。つまり手術の時期は限定されず、新生児から大人まで幅広く、麻酔などのリスクや本人の負担と、機能障害によるデメリットを鑑みて判断することになります。
舌小帯切除術には、従来のブレードメスによる方法とレーザーによる治療があります。
ブレードメスによる治療
舌小帯をブレードメスで切除する従来の方法です。
①麻酔をする
通常は舌小帯周囲への局所麻酔で手術を行いますが、乳幼児のように手術中に動いてしまう危険性がある場合や重度の場合には全身麻酔で行うこともあります。
②舌小帯を切除する
ごく軽度の場合には、外科用ハサミやメスで切除することがあります。その場合手術の時間も10分程度で終わります。
近年ではレーザーや電気メスを導入している医療機関も増えており、出血や痛みを最小限にすることが期待できます。
③必要に応じて再癒着防止のために縫合
舌小帯切除術のリスクのひとつに再癒着があります。
再癒着すると、再び舌小帯短縮症の状態に戻ってしまうため、多くの場合は縫合して再癒着を防ぎます。
④抜糸、経過観察
術後およそ1週間程度で抜糸をします。その後は、再癒着や傷の治り具体の経過観察を行い、同時に機能訓練の必要性を判断します。
レーザーによる治療
レーザーによる治療では、装置から放出されるエネルギーを集中させ熱エネルギーに変換し、舌小帯に照射して離断します。
レーザーによる小帯切除は、麻酔後短時間で治療が完了し、治療後の痛みや腫れ、出血が少なく、術後の縫合を必要としないこともあります。また、傷の治りも速く日常生活への影響が少ないのもメリットです。
当院では、熱侵襲の少ない歯科用YAGレーザーによる治療を行っており、周辺の健康な組織への影響もほとんどありません。
術後の注意点
手術当日は、麻酔が切れたら食事も可能です。麻酔が切れた後は痛みや出血のリスクがありますが、ほとんどは鎮痛剤でコントロールできる程度であり、数日で軽快します。また感染予防のため、傷を清潔にしておくことが必要で、洗口剤の使用を推奨することもあります。
約1週間程度で抜糸を行った後は、医師の指示に従って機能訓練を継続的に行うことが大切です。
【まとめ】舌小帯短縮症とは?症状・リスク・治療法(手術の判断)についても解説
舌小帯短縮症の症状やリスク、そして手術の判断基準や具体的な治療法について詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事の要約
- 舌小帯短縮症は、舌の裏のひだが短く厚いことで舌の可動域が制限される先天的異常
- 舌小帯短縮症の症状は、「軽度」「中等度」「重度」に分かれ、中等度以上では舌を出したときにハート型になったり、特定の音(タ・サ・ラ行など)の発音が苦手になったりする
- 診断基準は医療機関や年齢によって異なり、日本では経過観察が主流だが、海外では機能異常があれば積極的に手術を行うスタンスが主流である
- 放置リスクとして、哺乳・食事の障害(体重が増えないなど)、構音障害(滑舌の悪さ)、口呼吸、歯列不正(出っ歯など)、将来的なコンプレックスが挙げられる
- 軽度〜中等度では筋肉を鍛える筋機能訓練(MFT)や発音訓練、経過観察を行うことが多い
- 重度で機能改善が見込めない場合は、舌小帯切除術を行い、従来からあるブレードメスによる切除と、痛みや出血が少なく術後の回復が早いレーザー治療がある
- 術後は当日から食事は可能だが、再癒着を防ぐために医師の指示に従って、継続的な機能訓練を行うことが重要
舌小帯短縮症は、哺乳や食事、発音、そして将来の歯並びや精神的なコンプレックスなど、子どもの成長や日常生活に大きな影響を与える可能性があります。しかし、症状の程度を正しく把握し、適切なタイミングで治療や機能訓練を行うことで、これらの問題はしっかりと改善していくことができます。
「もしかして我が子も…」と少しでも気になる症状がある場合は、一人で悩まずにまずは専門の医療機関で診察を受けてみることが大切です。
南多摩歯科クリニックでは、周辺の健康な組織への影響が少なく、患者さまへの負担を最小限に抑えた歯科用YAGレーザーによる安心の治療を行っているほか、術後のサポートや機能訓練まで丁寧に対応しております。舌小帯短縮症に関する疑問や不安をお持ちの方、治療や手術を検討されている方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。




