咬筋ボツリヌス治療とは
咬筋ボツリヌス治療は、ボツリヌストキシンというたんぱく質を咬筋に注入して、筋肉の緊張を和らげる治療です。歯ぎしりや食いしばりによるさまざまな悩みや、症状を緩和することが期待できます。
ボトックス治療やボトックス療法ともよばれ、美容外科やリハビリテーションなど、さまざまな医療の現場でも活用されています。
ボツリヌストキシンとは
ボツリヌストキシンとは、ボツリヌス菌という細菌が生成する毒性のあるタンパク質で、神経に作用し一時的に筋肉の動きを麻痺させる働きがあります。
この神経毒を無毒化し、作用だけを残したものがボツリヌストキシン製剤です。
咬筋とは
咬筋とは、耳の前あたりから下顎まで伸びる筋肉のことで、両頬の外側に位置する咀嚼筋のひとつです。
顎を閉じる時に下顎を持ちあげる働きを持ち、咀嚼や会話、笑顔などの表情を作るための大きな役割を担っています。また、硬いものをしっかり噛んだり、大きく口を開けたりする力強い動作や食いしばりや歯ぎしりなどの際にも働く筋肉です。
咬筋の肥大化とは
歯ぎしりや食いしばりによって日常的に過剰な力が加わり続けると、咬筋が通常より発達して肥大化することがあります。
咬筋が肥大化すると咬合力はさらに強くなり、それによって歯が割れたり擦り減ったり、ブラキシズム対策のマウスピースが破損したりするリスクがあります。また、顔を形作る筋肉が大きく発達するのでエラが張り、顔の輪郭が大きく見えることがあります。
こんな症状におすすめ
- 就寝中や集中している時に歯ぎしりや食いしばりをしている
- 朝目覚めた時顎が重い感じやだるい感じがある
- 歯の詰め物や被せ物がしばしば外れたり壊れたりする
- 歯が欠けたり、折れたり、擦り減ったりする
- 冷たいものを食べると歯がしみる
- 首や肩の凝り、頭痛などの症状がある
- マウスピースが気持ち悪くて入れられない
- マウスピースに穴が開いたり、壊れたりする
- 口が開きづらい、口を開けると痛い
- 顎関節から音がしたり、がくがくしたりする
咬筋ボツリヌス治療で期待できる効果
咬筋ボツリヌス治療は、歯ぎしりや食いしばりなどによって起こる、さまざまな症状の原因にアプローチして改善する治療法です。
歯ぎしりや食いしばりの軽減
ボツリヌストキシンの作用によって、歯ぎしりや食いしばりの原因である咬筋の強い緊張を抑えることができます。
起床時の顎の疲労の緩和
特に就寝中のブラキシズム等によって、過度に緊張が続く咬筋を休ませることができるため、起床時の顎の疲労感から解放されます。
歯や詰め物の保護・脱離防止
歯ぎしりや食いしばりが軽減することで、歯が欠けたり擦り減ったり、歯の詰め物や被せ物が破損したり、脱離したりするのを防止することができます。
知覚過敏の予防や症状緩和
歯ぎしりや食いしばりのある人に起こりやすい知覚過敏を予防したり、症状を和らげたりすることが期待できます。
首や肩のこり、頭痛などの緩和
歯ぎしりや食いしばりによる筋肉の緊張からくる慢性的な首や肩の凝り、頭痛などの症状を改善することができます。
マウスピースの破損が防止でき、不要になることもある
強い歯ぎしりや食いしばりの力によるマウスピースの破損を防ぐことができます。また、マウスピースの適用症であるにもかかわらず嘔吐反射のある方が、マウスピース使わずに済むこともあります。
顎関節症の予防や症状緩和
歯ぎしりや食いしばりによって起こる顎関節への負担を軽減し、顎関節に関連したさまざまな障害を予防したり、症状を和らげたりすることが期待できます。
気になるエラを改善
歯ぎしりや食いしばりで発達し肥大化した咬筋は、エラ張りの原因になります。また、歯ぎしりや食いしばりはなかなかやめられないため、肥大化した咬筋が元の大きさに戻ることは困難ですが、咬筋ボツリヌス治療によって咬筋の動きを抑制して緊張を緩和すれば、エラの張り具合を小さく改善することが期待できます。
こんな方は注意!咬筋の簡単チェック方法
- リラックスしてエラ部分に手を置きます。
- 奥歯でぐっと2~3回噛みしめます。
- 噛みしめた時に動く筋肉(咬筋)を確認します。
- 咬筋の硬さや強さを確認します。
- 硬い(強い)と感じた場合は一度専門医に相談することをおすすめします。
当院で使用するボツリヌス製剤(イノトックス)の特徴

当院の咬筋ボツリヌス治療では、韓国製のイノトックス(INNOTOX®)を採用しています。
実績あるメディックス(Medytox)社製製剤
イノトックス(INNOTOX®)を製造するメディックス(Medytox)社は、韓国におけるボツリヌストキシン製剤の先駆けであり、現在は世界60カ国以上に販売実績があります。
世界的企業であるアラガン社とライセンス契約を結び、その高い技術と研究により開発されたイノトックス(INNOTOX®)は、世界初の液体型ボツリヌス製剤です。
ヒト血清アルブミンや動物性由来物質を完全不使用
イノトックス(INNOTOX®)は、ヒト血清アルブミンや動物性由来物質を一切使用していません。
従来の製品に使用されていたヒト血清アルブミンや動物性由来物質はアレルギー反応が起こるリスクがあり、ヒト血清アルブミンでは発熱、低血圧、呼吸困難、皮膚炎、じんましんなどのアレルギー反応が報告されています。そのため、欧米では2000年代初頭から使用しないことが推奨されています。
希釈不要による高い安定性
従来のボツリヌストキシン製剤は生理食塩水で希釈する必要があり、細菌汚染のリスクや注入時の濃度を一定に保つことが難しいという問題がありました。
イノトックス(INNOTOX®)は希釈不要の液体製剤ですので、そのまますぐに使用できることから高い安定性を確保しています。
効果の持続期間と施術頻度
イノトックス(INNOTOX®)は、効果の長さも大きな特徴の一つです。
他の製剤では、持続期間が3~4ヶ月程度とされていますが、イノトックス(INNOTOX®)は治療後2~3日で効果が表れ2週間程度で安定し、持続期間は4~9ヶ月程度とされています。
※施術効果や頻度には個人差があるものの、効果が切れる前に継続して投与することが推奨されます。
咬筋ボツリヌス治療の流れ
治療の流れを理解しておくと、ライフスタイルや予定に合わせて治療計画を立てることができます。
歯ぎしりや食いしばりなどによる症状やアレルギーの有無、悩みなどをお聞きします。その後、筋電計測定によって咬筋の状態や咬合力の強さ、緊張状態などの検査や確認を行います。
検査と診断を基に咬筋ボツリヌス治療が適応と判断されたら、治療について具体的に説明します。治療の効果や副作用のリスク、費用、今後の経過や注意点などを詳しく説明します。
治療内容に同意をいただけたら治療を行います。咬筋の位置を確認し、複数箇所に注射してボツリヌストキシン製剤を少量ずつ注入します。
治療時間は5~10分程度で、基本的に麻酔は行いません。
術後の体調確認を行い、注意点等について説明します。
2ヶ月に1回程度効果を確認します。治療の持続期間には個人差がありますので、必要に応じて再治療のご説明をさせていただきます。
咬筋ボツリヌス治療の料金
よくある質問
ボツリヌス治療は1980年代に始まり、それ以降世界中で多くの実績があり、安全性が認められた治療です。また、当院では安全性と安定性に優れた韓国製のイノトックス(INNOTOX®)を使用しています。
基本的にダウンタイムはありませんので、すぐにいつも通りの生活に戻ることができます。ただし、当日は長風呂や激しい運動、過度な飲酒、顔のマッサージなどは控えてください。
咬筋の状態に合わせて量や注入部位を調整しますので、表情が不自然になることはほとんどありません。
施術時間は5~10分ほどです。
極細の針を使用してゆっくり少量ずつ注入しますので、多少の刺激や注入時の圧迫感はありますが、痛みは少ないです。
咬筋ボツリヌス治療は保険適用されません。
アレルギー体質の方は、カウンセリングの際に必ずお知らせください。
その際、これまでのアレルギー反応についてできるだけ具体的にお話しいただくことがとても重要です。また、必要に応じてパッチテストを行うなど、慎重にアレルギー反応の確認を行う必要があります。問題ないと判断されたら施術を受けることができます。
治療概要
| 治療方法 | |
|---|---|
| 治療の説明 | 咬筋にボツリヌストキシン製剤を注入することで、咬筋の緊張や動きを抑制し、ブラキシズムやそれによるさまざまな障害や症状、悪影響を軽減したり、予防したりすることを目的とする世界中で実績のある保険適用外の治療です。 |
| 治療費 | 29,700円 |
| 治療期間 | 1日 |
| 通院回数 | 1回でも効果はありますが、効果の持続には定期的な注入が必要 |
| 治療の副作用(リスク) | ・稀に内出血などの副作用がある |
| ダウンタイム | 基本的になし |
| 術後の制限事項 | 当日は、長時間の入浴、激しい運動、過度の飲酒、顔のマッサージは行わないようする。 |
| 治療が受けられないケース | ・妊娠中や授乳中、妊娠の可能性の方 |
| カウンセリング当日の治療 | 当日施術の場合は予約時にお伝えください。 |



