歯科定期検診とは
歯科定期検診は、虫歯や歯周病などの口腔内の問題を予防したり、早期発見したりすることを目的に検査や処置を行うことをいいます。
口腔内は非常に複雑な構造をしていて、多くの細菌が常在菌として存在しています。また、身体の中でありながら常にオープンなので、外から侵入してくるさまざまな危険にダイレクトに晒されている場所でもあります。
そこで、定期的に歯科の専門職による適切なチェックとケアを行い、口腔のみならず体の健康維持とトラブル防止を図ることが重要と考えています。
歯科検診と歯科健診の違い
歯科検診と歯科健診は、なぜわざわざ表記を違えているのでしょうか。それは、この2つ言葉の持つ意味合いが異なるからです。
歯科検診は、歯科医院を受診して綿密な検査やチェックを行い、虫歯や歯周病などの口腔の問題を発見して、早期に適切な治療や処置につなぐことを目的としています。
保険適応である定期検診では、問診や詳細な歯と歯茎の検査、レントゲン撮影、歯石除去、歯磨き指導、クリーニングなど、個々の状態に合わせた一連の流れが定められており、必要に応じて治療計画に沿った歯科治療が行われます。
歯科健診は、自治体や学校などが行う公的な口腔チェックをいいます。検診のような細かい検査は行わず、おおまかに問題や異常がないかを確認し、必要と判断したら歯科医院を受診して精密な検査や治療を受けるよう助言を行います。
健診を受けるには該当する年齢や時期、受診資格などが決められていて、3歳児健診や学校健診、後期高齢者を対象とした歯科健診などがあります。
歯科定期検診の重要性
歯科定期検診は、単に現在の状態を知るだけでなく、虫歯や歯周病などの口腔に関する問題の早期発見と予防によって、長期的にトラブルを避けるためにとても有効な手段のひとつです。
近年では、歯周病の細菌が全身の健康を阻害し、悪化させる要因となることが明らかとなり、心疾患や脳血管疾患、糖尿病をはじめ認知症など、さまざまな疾病予防や悪化防止のために、早期かつ継続的に口腔ケアやメンテナンスを適切に行うことが求められています。
歯科定期検診のメリット
歯科検診を定期的に受けることは、将来的に様々なメリットがあります。
虫歯や歯周病の早期発見
虫歯や歯周病は一度罹患すると、治療をしても元の健康な状態に戻ることはできません。
適切に管理やケアをしなければ悪化することが多く、治療の内容も複雑になり、治療回数も治療費もかかり、歯へのダメージも大きくなります。そのため、虫歯や歯周病を早期に発見し、治療を行うことは大変重要です。
虫歯や歯周病予防の個別指導
虫歯や歯周病になる要因はわかっていても、人によって持っている条件が異なるため、予防法もそれぞれに違います。
定期検診では、歯科医師や歯科衛生士がそれぞれの口腔の状態や生活習慣を基に、歯の磨き方や日常的に気を付けることなどについて、専門的な見地から個別指導を行います。そのため、自分に合った方法を知ることになり、予防効果が高まります。
処置部位の劣化や異常の早期発見
一度治療した歯は、二次う蝕のリスクが高まることがわかっています。また、詰め物や被せ物の内部の異常は表面から気づきにくく、気が付いたらかなり進行しているケースも少なくありません。
定期検診では、レントゲン撮影なども行い内部まで確認することができるため、表面的にはわからないトラブルを発見することができます。
歯垢や歯石などの汚れの除去
普段歯磨きをしていても届かない部位や磨きにくい部位には、歯垢や歯石が溜まっていることが多いものです。そんな隠れた汚れを専門的な器具を用いて隅々まできれいにクリーニングすることで、歯や歯茎の健康を維持し、口臭も予防することができます。
状態の変化や経過観察
毎日休むことなく働き続ける歯や歯茎、筋肉や骨などの口腔に関わる組織は、徐々に変化していきます。
例えば、歯の擦り減りや歯茎下がり、関節の異常や口腔乾燥など、その状態は人によってさまざまで、定期的に観察しているからこそわかることがたくさんあります。
定期検診を受けることでこのような口腔に関する変化に早期に気付き、気を付けることや対応方法などの助言を受けることができます。
長期的な医療費の削減
口腔の異常を予防し早期発見や早期治療を行うことで、結果的に治療にかかる費用を大きく削減することができます。
例えば、小さな虫歯を詰めるだけなら1本あたり1,000~2,000円程度で治療回数も1回で終わりますが、進行した虫歯で神経を取って被せるとなると、費用は何倍もかかるうえに何回も通院しなければいけません。
費用だけでなく、時間の削減もできることは長期的にみても大きなメリットとなります。
歯科定期検診の内容
歯科定期検診では、患者様の状態や年齢によっても内容が変わってきます。
問診
全身状態や過去にかかった病気や現在治療している病気、現在服用している薬や生活習慣などの聞き取りを行います。
これらの情報は口腔の状態を確認するための基本的な情報となり、さらに状態によっては主治医と連携が必要になることもありますので、聞き漏らしのないよう確認していきます。
虫歯のチェック
歯を1本ずつ多方向から視診や触診だけでなく、専用の機器や器具を使って細かくチェックしていきます。
特に噛み合わせの溝や歯と歯の間、裏側、被せ物や詰め物の境目など、虫歯のリスクが高い部分は入念なチェックを行います。
歯茎のチェック
歯周ポケットの深さや赤み、腫れ、出血はないか、膿が出ていないかなどのチェックをします。
これらのチェックで異常がみられた場合、歯周病やなんらかの炎症の可能性があります。
その他の口腔と口腔周辺の異常のチェック
口腔は、歯と歯茎だけでなく舌や頬・口唇などの粘膜、唾液腺、顎の関節や筋肉など多くの組織があり、虫歯や歯周病のみならず口内炎などの炎症や顎関節症、口腔がん、口腔乾燥症など、さまざまな疾病が起こり得ます。
定期的にチェックを受けることで、変化や異常にいち早く気付くことができ、早期の治療や対応が可能になります。
必要な場合の追加検査
異常の発見や疑いがある場合にはレントゲン撮影などの追加検査を行い、確定診断の材料にします。
追加検査には、他にも口腔機能低下の確認に有効な舌圧検査や虫歯のリスクを確認できる唾液検査などがあり、必要に応じて行われます。
歯垢のチェック・歯磨き指導
汚れの染め出しによって、歯垢の残り具合や磨き癖をチェックします。
個々の口腔の状態に合わせて、歯科衛生士による個別の歯磨き指導や日常生活で気を付けるべきことなどのアドバイスを受けます。
歯垢や歯石の除去
専用の器具や機器を使って、歯垢や歯石を除去して口腔内をクリーニングします。日常の歯ブラシでは取り除けない汚れまでしっかりと除去していきます。
歯科に関する相談対応
虫歯や歯周病に限らず、さまざまな歯科に関する相談を受けています。
例えば、食いしばりによる不定愁訴や子どもの歯並びの不安、加齢や病気などに伴う咀しゃくや飲み込みの悩みなど、その範囲はとても幅広いものです。
専門家に相談することで、解決の方向性が見えてくることも多いため、気軽に相談してください。
歯科定期検診の通院頻度
歯科定期検診は一般的に3~6ヶ月に1回をお勧めしています。個々の状態に合わせて頻度の目安が決められますので、歯科医師や歯科衛生士の指導や説明を受ける際に適切な時期を相談するといいでしょう。
これまでに虫歯の治療をして、詰め物や被せ物が多い人や口腔や周りの組織などに気になる変化や異常がある人など、あまり長期間開けない方がいいと判断された場合は、3ヶ月に1回の定期検診が安心です。
虫歯や歯周病のリスクが高く、病状の悪化が懸念される人などは2ヶ月に1回をお勧めすることもあります。逆に自己管理がうまくいっている人や状態が安定している人は、6ヶ月に1回受診されるといいでしょう。
一般的な人間ドックや健康診断と同じように、1年に1回程度を目安にしている人もいらっしゃいますが、虫歯や歯周病は1年でかなり進行したり悪化したりすることがありますので、最低でも6ヶ月に1回は受けるようにしましょう。
年齢別に見る歯科定期検診
人は歯のない状態で生まれ、最初の乳歯が生えた後、徐々に生え揃い、やがて永久歯に生え変わって、その歯を生涯使って生きていきます。年月とともに口腔やその周辺組織の状況は刻々と変化していくため、それに合わせて定期検診で確認すべきことも変わっていきます。
生え始め~1歳半くらいまで
乳歯が生え始めて、徐々に生え揃っていく時期です。
速い子なら生後3~4ヶ月、一般的には生後半年くらい、遅い子では1歳くらいと個人差がありますが、最初の歯が生えてきたら歯科定期検診のスタートと考えましょう。もちろん、歯の萌出に限らず口腔に関して気になることがあれば受診することができますので、遠慮なく相談するといいでしょう。
1歳半~6歳くらいまで
3歳くらいを目安に乳歯が生え揃い、食べ物も大人と同じようなものを食べるようになります。自分で歯磨きをするようになりますが、まだまだきちんと磨けないので親御さんの仕上げ磨きが必要です。
この頃から虫歯のリスクがぐんと高くなり、初めての虫歯が見つかる時期でもあります。乳歯は生え変わるからと楽観せず、ご家庭での管理の仕方や適切なおやつの与え方など、本人だけではなく、特に親御さんにも一緒に取り組んでいただきたいことを定期検診でお伝えします。
また、歯列不正の兆候が見られるのもこの頃ですので、経過を追って観察していくことが必要です。
6歳~18歳くらいまで
6歳を過ぎると永久歯が生えてきます。乳歯が抜けてどんどん生え変わり、やがてほぼすべての歯が永久歯に置き換わります。
この時期は、生え変わりの途中にある歯の高低差や重なりなどがあり、汚れが残りやすく磨きにくい状態です。また、自分のタイミングで間食などをするようになり、親の管理から自己管理に移行する時期ですので、虫歯だけでなく歯肉炎なども起こりやすくなります。
また、骨格の成長スピードが徐々に鈍化して歯並びが定まる時期ですので、さまざまな角度からチェックと管理を行うことが大切です。
18歳~20代くらいまで
成人になり、虫歯だけでなく歯周病のリスクを視野に口腔ケアを行うことが大切な時期です。生活も不規則になりやすく、口腔の管理がつい行き届かない人も増えると共に、生活環境や体の変化も相まって歯周病の罹患率も増加し、45歳以上では、半数以上に歯周ポケットがあるという調査結果も報告されています。歯周病は悪化すると、将来的なQOLの低下に大きく影響します。
定期検診によって予防や早期発見ができますので、悪化を防止することができ口臭の予防にもつながります。
30代~60代前半くらいまで
さまざまな研究や調査で、50代くらいから虫歯や歯周病が原因で歯を失う人が増加します。
咬み合わせが適切に行えず口腔機能が低下すると、食べられるものが偏ったり歯周病の細菌が増えて誤嚥性肺炎や心血管疾患、糖尿病など、全身に影響したりすることがわかっています。自分の歯できちんと噛み続け健康を維持するために、定期検診は非常に有効な手段です。
65歳以上
高齢期になると、歯の一部や全部が義歯となっている人が少なからずいらっしゃいます。
歯周病で歯を抜いたり、ぐらぐらしたり、歯肉に腫れや出血のある人や高齢者に特徴的な根面う蝕がある人も多く、誤嚥性肺炎のリスクも高まるため、適切に口腔ケアと管理を行うことが求められます。特に要介護状態の人は、口腔ケアが難しくなるため、早めの定期検診やメンテナンスを受けることをお勧めします。
近年では、噛むことがフレイルの予防に効果的であることも広く知られています。生涯お口から自分で食べるために、定期検診をこまめに受けることが大切です。
よくある質問
必要です。虫歯を見つけることも目的のひとつですが、虫歯ができないように予防することや虫歯以外の異常を見つけることも大切な目的です。
また、それぞれのお口の状態に合わせた歯磨きの指導や歯のクリーニングなどを受けられますので、お口の中をよい状態に維持することができます。
同じ日に予約は可能です。ただ日によっては、お子さんがぐずったり嫌がったりすることもありますので、その場合には改めて別の日にお願いすることもあります。
親御さんが検診を受けるのを見てお子様が安心することもあるため、状況を見ながら臨機応変に対応しますのでご安心ください。
基本的に定期検診の流れは同じです。
同じ流れで検診を行うと、これまでの検診との変化や異常を見つけられるというメリットがあります。検診の中で気になることがあれば、必要に応じてレントゲン撮影や唾液検査などを行い確認します。
また、虫歯が見つかったり歯周病が進行したりしている場合には、通常の流れに加えて治療が必要になりますので、通院回数が増えることがあります。
治療概要
治療方法 | 歯科定期検診 |
---|---|
治療の説明 | 虫歯や歯周病などの口腔に関する異常の早期発見や予防を目的として、定期的に健康状態の確認や検査、クリーニング、指導や助言などによって健康を維持するための診療で、状態に合わせて数ヶ月に1回程度が推奨される。 |
治療の副作用(リスク) |
|
術後の制限事項 | 特になし |