粘液嚢胞除去とは
口の中を常に潤している唾液は唾液腺という器官で生成され、開口部に繋がる導管という管を通って口の中に出てきます。しかし、唾液線の開口部や導管の途中が何らかの原因で塞がると、唾液が分泌できなくなります。そうすると、塞がった部分に唾液が溜まり水泡のようになって膨らみます。
この膨らみを粘液嚢胞といい、それを外科的に取り除く処置が粘液嚢胞除去という外科的な処置です。
レーザーによる粘液嚢胞除去とは
従来の粘液嚢胞除去ではブレードメスを使った外科手術で、いわゆる刃のあるメスによって切開し摘出が行われます。
レーザーによる粘液嚢胞除去では、レーザーから放出されるエネルギーを患部に照射することによって嚢胞を摘出します。
レーザーによる粘液嚢胞除去はこんな方におすすめ
- 子どもやじっとしていられない
- 何らかの理由で出血によるリスクがある
- 何らかの理由で抜糸が困難
- 処置を短時間で済ませたい
- 術後の痛みや腫れなどをできるだけ抑えたい
レーザーによる粘液嚢胞除去の特徴
レーザーによる粘液嚢胞除去は、従来の方法と比較してさまざまなメリットがあります。
処置時間が短い
従来のブレードメスによる手術では、麻酔や切開、嚢胞の剥離から摘出、そして縫合と、いくつもの工程を踏み、それぞれの処置ごとの時間が必要です。
レーザーによる粘液嚢胞除去では切開から創閉鎖までが一度にできるので、処置にかかる時間が短縮できます。
低年齢の方や体動の多い方にも受けていただきやすい
レーザーによる粘液嚢胞除去では処置時間を大幅に短縮できるので、子どもや体動が多く手術中に不用意に動いてしまう人でも、手術に伴うリスクを低減することができます。
出血しにくい
レーザーを使った切除では、切除した組織部分の血管の断面が瞬時に焼灼によって封鎖されるので、ブレードメスによる切開より出血しにくいです。
瘢痕形成が少ない
レーザーの照射によって組織に加えられる熱侵襲が電気メスと比較しても非常に少ないため、術後の傷跡(瘢痕)が形成されにくいというメリットがあります。
小さい嚢胞の場合であれば縫合を必要としない場合がある
レーザーは止血能が高く、粘液嚢胞除去においても出血が少ないことから、小さい嚢胞は止血を目的とした縫合が不要になることがあります。
当院で使用するレーザー
当院で粘液嚢胞の摘出や蒸散術に使用するレーザーは、タカラベルモント社製の炭酸ガスレーザーを採用しています。
レーザーによる粘液嚢胞除去の症例写真
レーザーによる粘液嚢胞除去の流れ
- 1.
問診
問診では、まず患者様が気になっていることについてお聞きします。
さらに既往歴や現病歴、内服している薬の有無と種類、薬や食物・金属などのアレルギーの有無などについて確認します。また、現在の症状の経過についても具体的にお尋ねします。 - 2.
検査
受診の主訴(最も気になっていること)について検査を行います。
粘液嚢胞は骨組織に関連しない軟組織の疾患であり、画像検査は必要としないのが一般的です。視診や触診を中心に確認し、問診の内容も踏まえて検査を進めていきます。 - 3.
診断と治療方針の決定
粘液嚢胞との診断が確定したら治療方針の提案を行い、同意の確認をします。同意が得られれば治療の計画を立てます。
- 4.
治療
切開予定の周囲に少量の表面麻酔や浸潤麻酔を行います。
粘液嚢胞と周囲の粘膜の境目にレーザーを連続で照射し、徐々に分離していきます。次に嚢胞を鑷子(せっし)で把持し、嚢胞が破れないよう細心の注意を払いながら完全に分離して摘出します。
摘出後に小唾液腺があった場合には、同時に摘出を行います。その後、再度レーザーを照射して創面を蒸散させ、縫合せず開放創とします。 - 5.
経過観察
嚢胞摘出後に再発がないかを確認します。
よくある質問
炭酸ガスレーザーが組織に影響する深度は非常に浅いので、他の組織に影響することはほとんどありません。
治療中は局所麻酔をすることによって、痛みを抑えることができます。治療後に痛みがあっても、処方する消炎鎮痛剤で十分対処できる程度です。
術後は、かさぶたができて1週間ほどで傷が安定します。1ヶ月程で上皮化が進み、傷はほとんど気にならなくなります。
治療概要
治療方法 | |
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治療の説明 | 炭酸ガスレーザーで粘膜を切開し、内部にある粘液嚢胞を摘出する外科処置。手術時間の短縮や術後の炎症性反応、出血などのリスクをかなり軽減できる治療法として確立している。 |
治療費 | 保険診療の3割負担で4,000円程度 |
治療期間 | 一般的には1週間程度(経過による) |
通院回数 | 2回程度 |
治療の副作用(リスク) | 粘液嚢胞の再発、皮下気腫、術後の瘢痕形成 |